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小売業に将来はあるか?【小売業の今そして未来を予測】

小売業に将来はあるか?【小売業の今そして未来を予測】
今現在働いている方、将来の転職や就職を考えている方、小売業界の将来ってどうなんだろう?今後はやっていけるんだろうか?と気になることでしょう。


色々な面から考えて、正直厳しいと言わざるを得ません。それは、なぜか?


今回は上場企業の小売りの現場で10年以上の経験(現店長)がある私が、現場目線で色々な角度から考察します。

小売業に将来はあるか

正直きびしいです。その理由を順番に見ていきます。

私はいつも店にいて以下を肌感覚で感じています。

成熟した日本、モノが溢れかえっている

皆さんもご存じの通り、今の日本はモノを作れば作るだけ売れる時代じゃなくなりました。

生活に必要なものは、すぐ近くのお店で買えるし、基本的には品切れとかもありません。普通に生活するだけだったら、不便なんてまったく感じないですよね?

お腹が空けばどこでも食べ物が手に入るし、日用品も高品質で安価なものが大量に溢れかえっている。テレビも車も携帯も、一家に複数台は当たり前の時代です。

今後減り続ける人口

少子高齢化が叫ばれて久しく、いつからこの言葉が広く一般的に叫ばれるようになったのかなぁ、とさえ思います。

消費する「人」そのものが減っていけば、当然売れる量も減っていくのは当たり前です。

今後、消費の基準を考えるならば、消費人口が多かったこれまでの時代を基準にしてはいけないですね。

時代背景が現代とそもそも違う

戦後の日本は、かつてないレベルで人口増加しました。ベビーブームなんて言葉も聞いたことあるでしょう。

昭和20年代に生まれたいわゆる団塊世代は、1夫婦で子供3~5人なんて当たり前の時代でした。私達の親(65~75くらい)って兄妹、今じゃ考えられないくらい多いですよね。

それが今じゃ晩婚化も進み、未婚もすごい勢いで増え、結婚してても子供は少ない。風潮によってはリスクみたいな捉え方されてる場合もあるくらいです。

金も時間もないあげく将来が不安・・・とくれば、子供育てようって気が萎えるのは当たり前ですよね。

経済成長を支えた大きな要因:人口増

過去の栄光のように今でも語られる、昭和30年頃以降の高度経済成長期は、実は背景に人口の急激な増加があります。

よく、勤勉な日本人が敗戦から立ち上がり、がむしゃらに働いたからだ・・・みたいに語られます。それも間違いなく事実だとは思いますが、そもそも人口増がそれの下支えしたのです。

ちょっと考えてもらえればわかりますが、モノを作っても買う人がいなきゃ売れないですよね?

当時は、モノも金もない⇒豊かな生活が欲しい⇒がむしゃらに働く⇒給料をもらう⇒(人口増加してるから)売れまくる⇒儲かる⇒給料が上がる⇒また買いまくる の超好循環サイクルですね。

買い方と買うモノが変わった

買い方の選択肢が増えた

ひと昔前までは、モノが欲しければお店に行くしかありませんでした。あってもTVの通販くらい。インターネットが広く世に知られるようになったのが、1990年代後半。

それまでは、スマホはおろか携帯すらまともになかった時代です。

それが今はどうでしょう。宅配業者は大変ですが、ネットですぐポチれば、モノがすぐ届く時代です。家から出る必要もなければ、しゃべる必要すらない。

価格もネットで買った方が1割高いとかだったら、まだ店にもいきますが、ほぼほぼその逆ですよね。

SNS(アプリやゲーム含む)への課金

今や誰しもがやっているSNSやアプリやゲーム、こういったものにもお金が大量に流れるようになりました。それがなかった時代は、貯蓄か小売りに流れていたでしょう。

私の店でも課金用のギフトカードの売上が、ここ数年ですごい伸び率です。

私の店を例にあげると、店全体で月1500万の売上として、ギフトカードの売上は数年前は50万くらいだったのに、今は普通に100万こえます。

考えてもみてください。たかが100万と思うかもしれませんが、月たった1500万売上の店でさえ、それだけの金額が使われています。

店でギフトカード買わなくてもクレカで課金してる人も大量にいる(どう考えても店で買う人の方が圧倒的に少ない)。

誰しもお財布(金の出所)は1つなので、その課金に流れた分は、どっかのお店の商品が売れないことになります。

こういった消費の変化もここ20年でみるとすごくわかりやすい事例です。

今の「店」を支えているもの

ネットをまず使わない高齢者ですね。そこら辺のショッピングモールとかスーパー、ホームセンターに行ってちょっと見ればわかりますが、地方・時間帯によっては、お客さんの大半を高齢者が占めています。

高度成長期以降がんばってバブル終わるまでに金貯めたとか、年金も満額受給の人も多いでしょう。

金があるところにはあるので、逆に今のリアル店舗を支えてるのが、そういった高齢者の消費なのは間違いありません。人口比率からみても、当然と言えば当然でもあります。

雇用の現実

昭和~平成初期

一軒家建てましょう、車を持ちましょう(「いつかはクラウン」みたいな標語があった程)、終身雇用します、が当たり前でした。

非正規雇用なんて言葉は一般的じゃありませんでした。というか共働きがまず多くなかった。今とは真逆です。

平成中期~令和

今の企業はいかに低単価労働力を確保するか、それしか考えていません。

非正規雇用&共働きも増えたことで、子供をのんきに育ててる環境じゃなくなりました。(昔がのんきに育ててたって意味じゃないです)

企業も低単価を追及せざるを得なくなった側面に、「作っても売れない」が前提にあります。

今は、モノはある金はない⇒生活は普通に充足⇒普通に売れない⇒儲からない⇒給料が上がらない、または非正規メインで実質給料減⇒金がないから買わない の超悪循環サイクルです。

国として、負のスパイラルから抜け出さないと、どうにもなりませんね。

自社製品の台頭、大型店への一極集中構造

小売業界の売上高ランキングをみればわかりますが、大型モールやコンビニ、ドラッグストア、SPA(自社製造物流)モデルの企業が多数です。

ドラッグストア

ドラッグストアを後押ししてるのは、間違いなくここ最近の健康増進思考でしょう。

ひと昔前のドラッグストアは薬と日用品・化粧品ちょっとみたいな感じでしたが、今は食料品含めなんでも売っているので、普通にお客さんいっぱい居ますよね。

生鮮食品を除けば、ほぼドラッグストアで事足りてしまいます。

大型ショッピングモール

イオンなんかは、いつ見ても駐車場にどっちゃり車があります。自虐的ですが、私の会社の店とは大違いです。

大型店にお客さん集中、それ以外の小規模店舗や専門店はガラガラ、地方ではそんな二極化も顕著です。

SPA

SPAのところもがんばっています。わかりやすいところだと、ユニクロ、ニトリ、無印良品など。

仕入れて売るだけの従来の小売りモデルに限らず、自らがメーカーになり、それを売るという流れ。

溢れた時代の今だからこそ、商品にプラスアルファできる自社製造能力が大きく影響している証拠です。

従来の小売りモデルの半崩壊

これまでの「メーカー⇒(問屋)⇒小売店⇒客」モデルは、なくなりはしませんが、今後は生き残っていくところがかなり限定されそうな状況です。

モノが足りない時代や需要が伸びている時代は、右から左に売る小売業は最強だったと思います。メーカーさえモノを作ってくれればいくらでも売れたので。

また昔は、メーカーは作ることが出来ても、大規模な販路はなく、それを小売店に任せていました。だから従来モデルは必要だったとも言えます。

しかしネットの台頭により安価な広告費で、メーカーが簡単に直接お客さんに渡せるようになりました。これらも従来モデルがすでに時代に合わなくなってきている大きな要素です。

将来があるかないかは小売業に限った話ではない

人口減の影響は計り知れない

日本が、国として新たな局面に入っているのは間違いありません。いまから向こう40年後には人口が今の3分の2くらいになります。(今が1億3千万、2060年には7千万くらい)

そこに向けてこれからどんどんと、人口が減っていく感じになります。

結局のところ、人間そのものの数が減れば、消費は合わせて落ち込み、人数が多かった時と同じようにいくわけがないってことですよね。

今は無形の資産(動画、アプリ)やインバウンド需要で、潤ってるところは潤っていますが、日本人の数は減っていくので国内の需要はどんどん下がります。

業種に関わらず、国内向けメインの企業は遠からず、厳しい現実に直面する時が必ず来ます。

業界構造の変化

2040年くらいまでには、小売業界の形も大きく変わっていくでしょう。統廃合を繰り返し、大手しか生き残らないような形になっていくと思います。

日本のどこに行っても同じ店(同じ会社)ばかりが並んでいる日も来るかもしれません。それはそれで便利かもしれませんが。

もちろん生き残る企業もある

ないから欲しい⇒あるものから選ぶ、に変わった

私が生まれた頃はすでにある程度の商品がありましたが、それより前はそんなことはありませんでした。

私が生まれて以降も商品は進化を続け、30年前と今を比較したら比較にならないくらいです。便利さのレベルが違います。

モノがない時代は作れば売れました。しかし現在は完全に供給過多です。

今は、できる限り安く自分に合ったモノや良いモノを探す、という方向性になっていると思います。

小売業に求められるもの

小売業としては、良いモノを提供するだけでなく、リアル店舗という空間に付加価値をつけたり、良いモノをうまくアピールするネット活用の技術が求められています。

今後は上記のようなことを、フットワーク軽くすぐできる企業が生き残っていくと思います。

ネットの発達により時代の変化スピードが、昔とはまるで違うので、数年かけて・・・なんてちんたらやってたら、手遅れになりそうです。

不確かな未来へ歩んでいくために

ここまで、色々と考察してきました。

上にあげたような話は、業界や社会全体の話です。

近い将来必ずそうなっていく、といっていいでしょう。逆にならない理由が見当たりません。

社会と個人は似て非なるもの

しかし、個人でみた場合はまた違った見え方もしてきます。人口が減っても人が全部死ぬわけではありません。

これまでと同じやり方や考え方が通用しなくなっていくだけで、人には知恵というものがあります。

思考停止はやめよう

思考停止して、決まった時間に会社に行き、いつもと同じように仕事を時間内がんばる。

ではなくて、今後自分にはなにが出来るのか、どういう考え方やスキルが必要になってくるのか、そういったことを今の内からしっかりと考えておく必要があると思います。

突然会社が潰れた時、自分の手元には、未来に繋がるなにかがなにも残らなかった・・・では、シャレになりません。

未来の自分に投資しよう

上記は自分自身にも言っています。とりあえず「今を頑張る」でもいいかもしれません。これまで私もそのようにやってきました。

そもそも今を頑張れない人に未来はないとも思っています。ですが、今の時代はそれと同時に、将来の自分への準備がすごく重要になっていると感じます。

国が逆境を迎えても、それに引きずられることなく、個として生き残れる強さを身に着けたいものです。